旭さんと一緒に旅行したらよもぎさんが台風を連れてきた話③

前回までのあらすじ

結局、枕投げはしなかった。

 

 

★9月29日(土)★

本日は鳥羽から桑名方面へ向かいます。

しかし、空はあいにくの雨模様。

それもそのはず、この時、西日本には台風が忍び寄っていたのです。

旭さんが旅館の窓の外を見て呟きます。

 

「はぁ~、昨日まで晴れてたのになあ」

よもにいが来るってなったら急に崩れたな」

「敵は道草よもぎってことで良いですか?」

「良いぞ(良いとは言ってない)」

 

雨を憂いながら、いざチェックアウト。

しかし、ロビーまで行く途中で、不思議なものを見つけます。

 

「くさかべさん、これ、おみくじですよ」

「かーっ、見つけてしまったなァ!?」

 

旅館の廊下には、百円で引けるおみくじ箱がありました。

ちなみに、私がなぜこのようなリアクションをしているかというと、おみくじ運気が最悪だからです。

2016年から3年間、旭さんや仁科さんとは年に何度か旅行をしており、その度に神社を見つけては

「運気合戦じゃい!」

というノリでおみくじを引くのですが、毎回、2人は吉とか大吉なのに私だけ末吉だったりするので、

正直もう嫌なんだよマジで。(素)

 

しかし、2017年秋からこちらの運気は上り調子。(感じ方には個人差があります)

今の私の運気には、運気一つ分のビタミンCが含まれています。(当社比)

 

「――おらぁ! 引いたぁ! ……中吉ィ! どうじゃ旭ィ!」

「ワイは……あっ、小吉」

「ファーwww運気負けぇwwwねえ今どんな運気?www今どんな運気?www」

「御神前であるぞ。控えよ」

「むむっ、これはご無礼仕りました、小吉どの~www せうきちどの~www

 

誤解の無いよう申し上げておきますと、この3年間で私は彼らからこんなもんメじゃないくらいの運気マウントを取られているので、決してやり過ぎなどではございません。

煽られたら我慢せず煽り返す。

これを徹底していくことが、人と長年交流を続けていくコツでございます。(感じ方には個人差があります)

 

その後、チェックアウトを済ませて駅へ向かいました。

 

「旭さん、一つお知らせです」

「なに」

「乗る予定だった電車は、たった今、発車しました」

「ファッ!?」

「おみくじ引いてたのが余計でしたね」

「何で言わんのや!?」

「また電車乗り過ごしたら旭さんどんな顔するかなと思って」

「何やこのサイコパス……」

 

でも、そのお顔が見たかったの。

人間の知的好奇心ってすごい。(他人事)

 

誤解の無いよう申し上げておきますと、よもにいとの待ち合わせ時間にさえ間に合えばいいので、一本乗り過ごしたところで全然余裕です。

第三者に迷惑を掛けない程度にトラブルがあった方が、旅は趣深くなるものなのです。(感じ方には個人差があります)

また、実は昨日から2人で気にしていた「冷やしたいやき」のお店が駅にあり、その開店時間が10時だったこともあり、むしろ乗り遅れたおかげで開店時間内に買うことができたので結果オーライです。

 

冷やしたい焼きを購入後、駅のホームで電車を待ちます。

 

「ファーッ、これ硬すぎぃ!」

「旭さん何で既にたい焼き食べてんの。5分待って良い具合に溶けてから食べて、って言われたでしょ」

「は? たかがたい焼きが人間の顎に勝てると思ってんの?」

「何と戦っているのか」

「お前じゃい!」

「それは違う(冷静)」

 

さて、冷やしたい焼きを貪りつつ、近鉄松阪駅を経由して北上します。

そしてついに、よもにいが待つ駅に到着しました。

 

外に出てみると、雨の中、傘を差している人間が数人。

 

「くさかべさん、よもぎさんはどれですか……」

「記憶によれば、人畜無害そうな人のはずです」

「どれだ……みんな無害そうだゾ」

「うーん、……傍目に有害そうな人って意外といないもんですね(主体的・対話的で深い学び)

 

そんなことを話しつつ、目星をつけて一人の人間にアイコンタクトを取ってみますが、目が合っただけで反応ナシ。

念のためもう一度――しかし反応ナシ。

じゃあこの人は違うなと思って別の人に向かっていこうとしたところで「あの……」と、それまで反応の無かったその人が声を掛けてきました。

聞けば、よもにいその人じゃございませんか。

 

く「あっ、良かったです、正直違うのかなと思ってました」

よ「いえいえ、こっちもそうかなって思って……あー良かった」

旭「え、もしかして2人って、そんなに仲良くないんですか?」

 

旭さんの疑問ももっともなのですが、これにはきちんと理由があるのです。

確かに実際に会うのは2度目なのですが、普段はもっとやり取りしてるんです。

Discordとかで通話しながらゲームしたり、ゲームしたり、まあゲームしかしてないけど。

 

ですので、顔は分からなくとも、友情タッグトレーニングができる程度には親密度は高いはず。

それだけを信じて、私は旭さんとともに、よもにいの車に乗り込みます。

目指すは、なばなの里

 

よ「別に良いんですけど、何でなばなの里に行くんです?」

く「スカイプで打ち合わせてた時、旭さんが見つけたんですよ」

旭「何かお菓子みたいなところあるやん、言うてね」

よ「……それだけですか?」

 

それだけでした。

 

よ「少なくとも、男だけで、しかも雨の日に行くところじゃないですよ」

く「雨はよもぎさんのせいでしょ」

よ「えっ、なにそれは」

旭「こっちでは話がついてんだよ。台風連れてきやがって」

よ「いや、僕はただ三重に居ただけでしょ。連れて『きた』ならお二人の方ですよ」

く「今そんなハナシしてたか?」

よ「話の核心も核心だったでしょ」

 

正論もセイロン。もはやスリランカです。(歴史系知的ギャグ

そんなスリランカの雑草魂、よもにいの車から、aikoの曲が流れ始めます。

 

く「aiko好きなんですか」

よ「もうね、大好き」

く「♪はあぁあぁあぁ~~~! ♪恋をしたぁのわはぁ~~~!」

よ「絶対バカにしてるでしょ」

く「してないですよ。私もaiko好きだもの」

よ「ほんとぉ?」

く「♪あ~たしカブトムシ~~~!」

よ「大塚愛の『さくらんぼ』と混じってる」

く「♪はぁ~~~! ♪テトラポットのぼぉほってぇカブトムシ~~~!」

よ「山で飼ってあげて」

旭「くさかべさん、何でもすぐバカにするからな」

よ「ねえ(超速同意)」

く「いや、ホントに好きですよ。『聲の形』も、映画でもレンタルでもテレビでも見た」

よ「どのキャラが好きです?」

く「植野さん。あの子が唯一みんなと対話しようとしてたで」

旭「急に真面目なこと言い出す。くさかべ、お前はそういう奴やねん

く「えっ」

旭「お前、ちょっと人と違うことやりたがるからな。そういうとこやぞ」

よ「あ~、わかる~」

旭「この人ね、手動のコーヒーミル買って自分で豆挽いて飲んでるんですよ」

よ「うわ~」

旭「ガンダムも何が好きっていったら『ターンエー』っていうし」

よ「おえ~」

旭「好きなモビルスーツは『ハンブラビ』っていうし」

よ「ぎょわぎょわごえ~~~!」

旭「そういうとこあるでしょ?」

よ「あ~、『Dbd』でも最初クローデッド使うべきですよ、って僕が言ってるのに、頑なにタップ刑事使ってたしな~」

旭「そういうとこやぞ」

よ「しゃべんなくなっちゃった」

く「♪あ~たしぃ~わぁカ~ブトぉムシ~~~!(鳥獣戯画)」

 

精神的な折檻に耐え忍んでいると、無事になばなの里に到着。

助手席のダッシュボードに鼻クソ付けてやろうかと思いましたが、

今後よもにいが売れっ子になった時のことを考えてやめておきました。(人生設計)

 

ほとんど前情報無しで行ったなばなの里でしたが、要するにお花がたくさん見れますよ、という場所でした。

入村料はこの時期で1600円ですが、うち1000円は園内の飲食店で使えるクーポン券なので、お得感があります。

ただ、よもにいの言っていたとおり、雨の日に傘を差しながら、男三人で練り歩く場所でもありませんでした。

 

旭「あ、前にいるの、男女のカップルですよ」

よ「そうですよ。普通はああいう人たちが来る場所なんです」

く「でもあっちは男1人と女1人でしょ? こっちは男3人だから物理戦になったら勝ち確ですよ」

よ「奇襲好きそうな顔してるな~この人」

く「ノールック傘バンバン! ノールック傘バンバン!」

よ「水滴を飛ばすんじゃないよ! 小学生か!」

 

よもぎさんへの奇襲が成功。(追加効果:水やられ)

その足で昼食へ向かいます。

 

旭「なに食べます?」

よ「適当に頼みましょ」

く「あっ、四日市トンテキあるやん!」

旭「有名なんですか?」

く「よもぎさんが地元名物なのにバカにしてた」

よ「や、あれは違いますよ」

く「時々おばあちゃんが作るけど別に~、ってニシンパイの女みたいなこと言うてた

 

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あたしこのパイ、嫌いなのよね

 

く「あ~重なる! ニシンパイの女とよもぎが重なる! 義憤に駆られる!」

よ「だから違いますって。僕は、ばーちゃんの作るトンテキは好きなんです。でもわざわざ三重にそれ目当てに食べに来いっておススメできるものなのかなって疑問なんですよ」

旭「そういうとこやぞ、よもぎぃ」

よ「車内では味方だったのに……」

 

気を付けろ!

そいつは常に旗色の良い方につくぞ!

 

結論としては、四日市トンテキはおいしくて豚肉とは思えないくらい柔らかかったですし、私も旭さんも、そしてよもにいもみんなおいしいと言ってました。

 

く「でもこれ食べるために三重には来ないな」

よ「ほらぁ! さっきからそう言ってんだよこっちは!(敬語喪失)」

 

という訳で無事にお腹も満たされましたし、適当になばなの里を見て回ります。

雨が降って気温が下がる中、なんと園内に足湯を発見。

 

旭「あー、足湯めっちゃあったかいやん」

よ「なばなの里出たらどこいきます?」

く「イオンあります?」

よ「イオンなんて全国にあるでしょ」

く「旭さんがイオン好きみたいなんで」

よ「名古屋にでっかいイオンありますよ?」

旭「俺を唸らせるほどか?」

く「あなたのさじ加減次第でしょそれ」

 

という訳で、この後の経路が決定しました。

なばなの里を出て、一路、名古屋へと向かいます。

そして、運転しながらよもにいが呟きます。

 

よ「ほらぁ、あれが名古屋のイオンですよ。マインクラフトみたいでしょ

 

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く・旭「お~」

よ「でっかいでしょ~。マインクラフトを彷彿とさせるでしょ

く・旭「お~」

よ「ほら見て見てえ。マイクラみたいなんだからさあ~

 

よもぎさんがしきりにマインクラフトを比喩に出しますが、こちらはマインクラフトをプレイしたことが無いので一向に伝わってきません。

そういうとこだぞ。

 

そうして車を降りて、いざ、名古屋イオンモールへ。

 

よ「ほらどうですか、名古屋のイオンは」

旭「何でお前が鼻高々やねん」

く「三重県民が図に乗るなよ」

よ「お前らもう車乗せんからな」

 

この辺りになってくると、ほぼ遠慮も無くなってきていい感じです。

 

よ「そう言えばこの前、1階で北海道物産展やってたんですよね」

旭「おっ、くさかべさん行きたいでしょ」

く「いや、別に」

旭「くさかべさん、北海道出身なんですよ」

よ「あ、じゃあ行きたいでしょうね。無理しなくていいですよ」

く「いや、無理してる訳じゃなくて、ここまで来て地元のもの見たいと思わないでしょ」

旭「無理すんなって」

よ「どうせホームシックでしょ? しょうがないなあ、ついて来て下さい」

 

何か行きたいことにされてしまったので、黙ってついていきます。

まあおいしそうなものがあれば、何か1つ買ってみんなで分け合ってもいいでしょうし。

そうして、歩くこと15分。

 

く「まだあ?」

よ「あの、一つ良いですか?」

く「なに?」

よ「もう物産展、期間終わっちゃってるみたいですね」

く「きみ自分で何言ってるか分かってる?」

旭「分かってる?(便乗)」

よ「や、まさかこのタイミングでやってないとは思わないじゃないですか」

く「勝手に物産展行きたがってるみたいな空気にして? いざ行ったら終わってました? は?」

旭「そうだよ(便乗)」

よ「いやー、まさか終わってるとはね。これだから愛知は

く「おう、さっき愛知の威光を借りたかと思えば、もう責任転嫁か」

旭「そうだよ(便乗)」

よ「旭さんはどういう立場なんですか?(奇襲)」

旭「今そんなハナシしてたか?(迎撃)」

 

三つ巴の不毛な論争が続く中、私たちはホテルのある四日市へ向かいます。

よもにいと夕飯をご一緒した後、よもにいは帰宅。私と旭さんはホテルにチェックインしました。

 

例によって例の如く、旭さんは私の部屋に居座る訳ですが、そんな中、私のLINEがメッセージを受信します。

 

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迫りくる台風

 

「旭さん、今、兵庫の姉からLINE来たんですけど」

「ほう」

「明日、もしかしたら結構ヤバいかもしれません」

「え? でもコミティアはやるんやろ?」

「今朝確認したらそのはずでしたけど……あっ

 

鎮魂歌

 

「旭さん、明日の予定は全て無くなりました」

「ファーッwww」

「午後になってから電車に乗ってたら、家にすら帰れなくなるかもしれません」

「どうしよぅ……(乙女)」

「じゃあ……明日は朝6時30分の近鉄特急に乗って大阪で別れますか」

「6時30分!? 嘘やろ!?」

「私だって起きたくないですけど……立往生したくないし」

「……じゃあもう部屋帰って寝る……」

 

初めて旭さんが早く寝ました。

台風ってすごい。

 

 

★9月30日(日)★

――翌日。

早朝は静かで、まだ風も雨もありませんでした。

私も旭さんも特にはしゃぎもせず、ただ義務感で電車に乗り、義務感で改札を通り、いつの間にか大阪駅に着いていました。

 

「じゃあまた」

「はい」

 

終わりというのはあっけないもので、しかし、これでいいような気もします。

あっけない方が寂しさも薄れますから。

 

旭さんと別れ、私は姉夫婦のいる兵庫へ電車を乗り継ぎます。

その後、電車が止まることも無く、10時には目的の駅へ到着しました。

そして、駅を降りてマンションを目指すと、見覚えのあるご婦人が1人。

 

「あれ、姉さんやん」

「あ、かっちゃーん、良かったねー着いて」

「台風来るんでしょ? 何で外いるの?」

「あたしねー、これから仕事

「は? 台風来るんでしょ? 仕事あんの?」

「うちのお店、イオンの中に入ってるんだけど、イオンが開店する限りうちの店も開けるんだって

「ファーwww」

 

すごいねイオン! マインクラフトみたい!(誤用)

 

 

(終わり)

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