旭さんと一緒に旅行したらよもぎさんが台風を連れてきた話②

前回までのあらすじ

次の駅まで歩こうって旭さんが言ったのでそのとおりにしたら、乗る予定だった電車に追い抜かされて旭さんがキレた。

 

 

★9月28日(金)★

という訳で一夜明け、この日は西焼津のホテルからスタートです。

まず、何は無くとも寝不足。

というのも、前日の夜に旭さんが私の部屋に押しかけてきて、午前1時くらいまで出ていかなかったからです。

私も旭さんも歩き疲れてウトウトしているのに、旭さん、私のベッドに居座ったままテレビを見続けていらっしゃる。

 

「旭さん、もう眠いんですけど」

「まだイケるやろ」

「旭さんもちょっと頭カクカクしてるじゃないですか。眠いんでしょ?」

「まだイケるやろ」

「何と戦っているのか」

「お前じゃい!」

「何でこんな元気なんだこの人」

「旅行なのに寝るのもったいない……」

「小学生かな」

 

それを経ての寝不足の2日目朝です。

今日は西焼津から電車を乗り継ぎ伊良湖岬へ。そこからフェリーに乗って鳥羽のホテルへ宿泊する、という予定となってます。

 

まず旭さん、飲み物を買いたいと言い出して、駅とは逆方向のコンビニへ向かいます。

この日は朝から晴れ。昨日にもまして、歩き日和です。

 

「今日は朝から暑いですねえ、旭さん」

「ほらあ、水分補給重要やん。飲み物買いに行って良かったでしょ?」

「それなんですけど、わざわざ駅と逆方向に行かなくても、駅の自販機で買えばよかったのでは?」

「はぁ~? お前正論ガチ勢?

「ガチ勢とは」

「こっちだって途中で気付いて後悔してたわ」

「ごめんね」

「絶対に許さない!(苦節三十年)」

「急にキレる」

 

そんなこんなで駅に到着。

ここからは東海道本線を下って豊橋駅へ。そこから豊橋鉄道に移って、新豊橋駅から三河田原駅まで、ずっと鈍行に乗り続けます。

正味2時間半というところでしょうか。

途中、新豊橋駅では「豊橋・鳥羽割引きっぷ」を購入。

これを買うと、新豊橋駅から鳥羽までの、鉄道・バス・フェリーを980円引きで利用することができます。

 

さて、豊橋鉄道に揺られながら、まずは三河田原駅を目指します。

 

「あ、くさかべさん、次の駅、神戸(こうべ)ですよ! 我々はすでに関西に突入していた……?」

「あれはコウベって書いてカンベって読むんですよ」

「は? 神戸(こうべ)は神戸(こうべ)だろ? ふざけんな」

「どこがキレどころさん?」

「勝手にコウベ名乗りやがって……許せん……(義憤)」

「いや、名乗りはカンベですよ」

「お前カンベの肩持つんか?」

「もうカンベって認めちゃってるじゃん(ゲシュタルト崩壊)」

 

その後もだいたい三悶着くらいありましたが、無事に三河田原駅まで到達。

ここからはバスで伊良湖岬まで向かいます。

 

で、恐らく日頃から伊良湖岬に向かう人ばかりなのでしょう。

三河田原駅の改札の駅員さん、こちらが前述の「伊良湖・鳥羽割引きっぷ」を見せただけで

「(次は)2番乗り場ぁ……」

と、バスの乗り場を教えて下さいました。

逆に言えば、それ以外に何も言葉を発しませんでした。

日々の業務で疲れているのでしょう。何か顔色も良くなかった。

私と同じことを思っていたらしい旭さんが、歩きながら私に話し掛けます。

 

「あの人、絶対NPCやん」

「分かる。多分何回話し掛けても『2番乗り場ぁ……』としか答えんぞあれ」

 

20160730_vc-pokemon01.jpg

2番乗り場ぁ……

 

その後、バスまで三十分ほど時間があったので暇潰しをすることに。

 

「なんや古墳あるやんけ。行ったろ!」

「旭さん大丈夫? 迷わない?」

「案内板見たら激近やんけ。へーきへーき」

 

そうして歩くこと5分。

 

「くさかべさん、これ……こっちの道でええんか?」

「わからんちん」

「あーもうめちゃくちゃだよ。やめやめ!」

 

旭さんが初めてご自身の肉体ナビを放棄しました。

快挙です。

前日、電車に追い越されたことから全てを学び取った。

旅行の中で成長している……!

 

3.jpg

じつは死ぬほど近い

 

敗因は、信号で右折しなければならなかったところを、私たちは左折していたところです。

引き返して大正解!

 

そうこうするうちにバスの時間になったので、改めて2番乗り場へ。

しかし、5分経ってもバスは来ません。

 

「くさかべさん、これ乗り遅れたんちゃいます? 昨日みたいに、昨日みたいに……!(トラウマ)」

「バスは電車と違って5分くらい普通に遅れますよ。大丈夫です」

 

その後、さらに5分、10分経ちましたがバスは来ません。

 

「くさかべさん、これくらい遅れるもんですか?」

「いやあ……」

 

私たちの他にバスを待っていた青年が1人いらっしゃいましたが、彼はしびれをきらしたのか、駅に戻って職員に何か尋ねているようでした。

しかし、すぐにまた乗り場に引き返してきます。

 

「あの人あれやな、聞いたけど『2番乗り場ぁ……』としか答えてもらえんかったんやろな」

「あ、今の似てた。もっかいやって下さい旭さん」

「『2番乗り場ぁ……』」

「うまい」

「『うっうー!』」

「唐突な高槻やよい

「『そゆことかー』」

「今の何?」

「新しい方のドラえもん。『そゆことかー』」

「ああ、わさび版ね。うまいうまい。ドラえもんで思い出したけど、あれできるわ。ケロッグのチョコワの象」

「やってやって」

『僕のようにでっかくなろぅ!』

「なつかし~。ケロッグなら、あれできるで、虎のやつ」

「やってやって」

『グゥレイトォ!』

「Foo~、トニータイガー~」

 

そうこうしてたら、バスが来ました。

前の停留所でエンジンが壊れて、代車用意してたら30分遅れたそうです。

この旅行トラブルしかねえな。

 

そうして今度はバスに揺られて1時間。

伊良湖岬に到着。

 

DSC_0339.JPG

最後までバスに乗っていたのは私たち2人だけでした

 

もうお昼を過ぎていたので、シラスとあさり煮の入った「みさき丼」と、焼き大あさりで腹ごしらえ。

その後、メロンソフトを食べながら、フェリーの時間まで海岸周辺を散歩します。

ちなみにここで伊良湖灯台を探しに歩きましたが、案の定行ったり来たりしました。

 

DSC_0343.JPG

しかし無事に発見。着実に2人とも進化している。

 

そしてついに、伊良湖フェリーへ乗船する時間となりました。

何も難しいことはありません。

ただきっぷを見せて乗るだけです。

 

船の人「これじゃ乗れないよおにいさん」

 

なんと、ここで旭さんがまさかの乗船拒否。

イヤーマフがドレスコードに引っ掛かったのか?

 

そうではございません。

旭さんが自信満々に見せていたのは、フェリーの切符ではなく、前日に乗ったふじかわ5号の乗車券の領収書でした。

 

「あれ? きっぷどこだ?」

 

旭さんがバッグをまさぐり始めます。

 

――あ、やりやがった。

 

まさか本当に、え? 切符失くすとかある?

修学旅行生じゃあるまいし?

は? マジィ?

 

そうして旭さん、まさかのきっぷ紛失という大チョンボを果たしそうになりましたが、5分後にレシートまみれの財布の中から無事発見。

要らないレシートは捨てようね。(発船2分前)

 

気を取り直して、再度乗船。

今度は無事に乗れましたが、乗ったら乗ったでさらなる困難が私たちを襲います。

 

「くさかべさん、酔い止め買ったんすか?」

「買ってないです」

「は? なんで?」

「飲むと眠くなるし……」

 

前回の日記で少し触れましたが、私も旭さんもとにかく三半規管が弱い。

特に私は小学生の頃、稚内―礼文島間のフェリーで1けろっぴ、修学旅行の稚内―札幌間のバスで2けろっぴ、社会人になって札幌―釧路間の振り子特急で3けろっぴをキメた終身名誉けろっぱーなので、気が気ではありません。

でもほら、酔い止めって飲むと眠くなるし、

せっかくの旅行なのに寝るのもったいない……。(デジャヴ)

 

という訳で、船が動き出した直後から、私と旭さんは外に出て風にあたりながら、乗車時間60分ずっと立ちっぱなしで景色を見ながら会話し続ける――という万全の船酔い対策をキメ込みました。

 

「お、なんやくさかべさん、この程度の揺れなら全然大丈夫ですわ」

「そうですね、意外とどうとでもなりそうですね」

「あ、待って、なんやちょっと速度上がりました?」

「これ知ってる。この縦揺れはヤバイ。ちっちゃくて速い横揺れの合間に来る、この大きな周期の縦揺れがヤバい

「はよ何か面白いハナシして」

「今年の春、午前2時にアパートの部屋に見知らぬ外国人女性が押しかけて来たハナシってしましたっけ?」

「聞いたわ。警察呼んだやつやろ?」

 

10分くらいチャイム鳴らされ続けるし、ドアノブ30連ガチャされるし、あの時は生まれて初めて死を覚悟しました。

こんな感じで、私のアンニュイでメランコリーなドタバタ臨死体験記を話しつつ気を紛らわせていると、意外と早く、岸が見えてきました。

 

「くさかべさん、あれイオンちゃいます?」

「また始まった」

「いや、あれはイオンですよ」

紫色のもの全部イオンに見える病気なのでは」

「新幹線で見たイオンかなあ……」

「鳥羽は通らないでしょ」

「でもあれはイオンですやん」

「ふーん……あっ、イオンや」

 

5.jpg

イオンでした。

 

そんなこんなで港町、鳥羽に到着。すぐ近くには水族館がありました。

 

水族館前のポスト。あまり写真を撮らない旭さんさえも魅了したラッコ。

 

「さてくさかべさん、今日の旅館ですが」

「おう、はよ枕投げしようや」

「あちらの旅館になります(ババーン)」

「わあ~、築年数がヤバそう」

「旅館の名前が赤字で打刻されてる辺りがなんとも……」

「赤錆が下に垂れて、なんか血文字みたいになってますね……」

「まあ一泊4000円やし」

「さもありなん……あっ、旅館の前にネッコおる~~~!」

 

ネッコに愛を搾り取られる

 

旅館の外見はちょっとアレでしたが、中もそれなりにおどろおどろしい感じでした。

エレベーターは年季が入っており、昨今のゆったり加速ではなく、最初からトップスピードに乗る感じのやつ。

 

えれべーたくん「乗って乗って」

さんはんきかん「6階まで~」

えれべーたくん「マグナムトルネード!(豪ッッ!!!!)」

さんはんきかん「ぐわわわわわわわ!!!」

 

正直、船よりも酔う。

 

内耳を痛めながらも部屋に向かうと、しかし、なかなか風情のあるお部屋じゃございませんか。

眺めの良い窓。

畳の上にはぴったりくっついて置かれた2組の布団。

 

「くさかべさん、布団の距離近過ぎません?」

「そら君ィ、金曜の夜に観光地で同じ部屋に2人が泊まるってなったら、旅館の人だってそう考えるやろ」

きっしょ。誰や同じ部屋にしようとか言うた奴」

「は? お前かてノリノリやったやろがい! 枕投げイイネ言うとったやろがい!」

「でも正直、思いますわ」

「なに?」

「この旅館古いし雰囲気あり過ぎて、別々の部屋やったら怖くて寝れんかったかも」

「分かる~~~~~~~~!」

 

共感したらお腹が減った。

時刻を見ればもう6時。そろそろご飯の時間です。

 

「くさかべさん、もうそろそろ出ます?」

「いっすよ~……あ、待って、メール来た。……おっほぅ」

「何かありました?」

「これ、すぐにお返事したいから、待ってもらっていいです?」

「いーぞ。茶ぁ飲んでるわ」

 

~20分後~

 

「できました?」

「もた……もた……」

「そんなかかる?」

「文面を……最上の文面を作るのだ……待って……」

「いーぞ。茶ぁ飲んでるわ」

 

~20分後~

 

「できました?」

「もた……もた……」

「まだやってんの?」

「普段パソコンだから……スマホだと入力に時間が……待って……」

「いーぞ。茶ぁ飲んでるわ」

 

~20分後~

 

「まだかぁ! ●すぞくさかべぇ!」

「あっあっあっあっ!」

 

命からがら送信しました。

そうして、二人で外へ出ます。

 

「あー、誰かさんのせいでめっちゃ腹減ったわ」

「お腹空くと何でもおいしくなるから結果オーライでは? 我を崇めよ」

「なんやこいつ」

「昨日たくさん歩いた後に食べた身延まんじゅうおいしかったでしょ?」

「おいしかったぁ(恍惚)」

 

その後、通りがかったお店でお夕飯。

観光客向けというより、普通においしいから地元の人が来る、みたいなお店で、色々と良心的でした。

 

ウニとかめっちゃ入ってる炊き込みおにぎりすごい

 

さて、翌日はついに桑名に北上する予定です。

そして三重県には我らが味方、道草よもぎこと、よも兄(にい)がいます。

次の日は昼からよもにいと合流し、三重の魅力を伝えてもらうことになっているので、前日からわくわくです。

 

「くさかべさん、明日ってどうなってるんです?」

「よもにいが車出してくれるって言って下さったので、近鉄の途中駅で下車して、そこから車乗せてもらいます」

「去年の忘年会で会ったきりでしょ? 顔覚えてるんですか?」

「………………いやぁ……?」

 

うーん、無鉄砲!

 

(③に続きます)

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