旭さんと一緒に旅行したらよもぎさんが台風を連れてきた話①

お世話になっております、くさかべです。

前回の日記に書きましたが、9月27日~30日に旭さんと東海旅行に行ってきました。

本当ならもう1人一緒に行くはずだったのですが、何か〆切が忙しいということで、今回は見合わせということになってしまったのが心残りです。

あーあ、座敷童子の代理人、早く出ないかなー。(威圧)

 

さて、どうして東海に行くことになったかと言いますと、前述のとおり、本来は3人体制での旅行を計画しており、その際は誰も行ったことの無い九州に行こう、ということになっていました。

でも今回1人欠けるということで、九州は今後3人で行く時のために取っておこう、という感じになったのです。(ここまでの思いやりはくさかべの提供でお送りしました)

じゃあ代わりにどこ行こう、ということになりまして、「いっそ微妙なところにしよう」と私が提案し、東海になりました。(ここからの偏見はくさかべの提供でお送りします)

 

そしたら、旭さんが「ゆるきゃん△」の聖地巡礼をしたいと言い出して、山梨県の身延駅に行くことが決定しました。犬子と先生もっと出して。

その後の経路は2人でスカイプで打ち合わせつつ、私の食べたいものシリーズでほぼ行き先が決定しました。

 

・おいしい魚が食べたい → 焼津

・おいしいはまぐりが食べたい → 桑名

 

ということで、身延→焼津→桑名の方向性は定まりましたが、焼津・桑名間をどう繋ぐのかが問題となりました。

最初は陸路で行こうかという話にもなったのですが、「どうせなら船乗ろう」と私が提案し、鳥羽フェリーで海路を行くことに。

私も旭さんも三半規管よわよわの民なのに――きっと私たち2人とも思い出が欲しかったのね。(洋画字幕)

あと、最終30日は関西コミティアがあるとのことで、せっかくだし行こうか、みたいな話にもなりました。

コミケは一度だけ2人で行ったことがありましたが、コミティアは2人とも経験無かったので。

 

旅程.png

とにかく列車と船に乗りたい想いに駆られた3日間の予定経路

 

ということで日程が決まり、宿の手配は旭さんがしてくれました。

ちなみに鳥羽はホテル以外に館がたくさんあったみたいで、「旅館の方が雰囲気あるやろ」という旭さんの雰囲気理論により、旅館宿泊となりました。

さらにそこで、「どうせなら一緒の部屋にして枕投げしようズェ……」という私の修学旅行理論により、相部屋宿泊となりました。

 

あー、すっごいわくわくする。(童心)

 

 

★9月27日(木)★

1日目。

この日はまず静岡駅で旭さんと待ち合わせ。

私は東京駅から、旭さんは新大阪駅から新幹線です。

道中、新幹線自由席でご夫婦に席をお譲りしたところ感謝の言葉を賜り、その後、私が降りる時にもわざわざ腕を叩いて「ありがとうね」と二度目のお礼を賜りました。

しかし勘違いしないで頂きたい。

当時の私はそろそろ小学館ジュニア文庫の新刊の発売も見えてきたので、徳を積まなければならなかったのだ。

別にご夫婦の幸せのためではなく、私の売上の願掛けみたいなものである。

徳を積めば積むほど売上が上がる。

これこそ、私が独自のメソッドを体系化して結果にコミットする感じで作り上げた「売上/徳比例理論」である。

ご夫婦には私の徳の糧となって頂いた。

つまり、件のご夫婦がこの日記を見ていたら本を買って下さい、ということです。(ここからの結果はくさかべのコミットでお送りします)

 

さて、10時くらいに静岡駅に着いたものの、旭さんが来るまであと30分くらい時間がありました。

きっと静岡駅はそれなりに大きい駅だから何かしら見るものがあるだろうと思ってプラプラした結果、

ちゃんとトイレがあって良かったという結論に至りました。

 

その後、旭さんと合流したのですが、まだ秋だというのにイヤーマフなんぞをこしらえていらっしゃって、

「何でこいつこんなかわいいものを身に付けてるんだろう――許せない!」

みたいな感情が沸き起こりました。(突沸)

 

さて、合流した後は、静岡駅からふじかわ5号に乗って身延駅へ。

列車に乗っている途中、旭さんが「実は今日、新幹線で、窓からでっかいイオンが見えたんですよ」と言い出しました。

 

「でっかいんですか」

「でっかかったんですよ。あんなでっかいイオン見たんは初めてですよ」

「この人なんでイオンにこんな興奮してるんだろう」

「いつも東京に行く時とは違う新幹線なんで、見える景色も違いましたわ」

「いや、旭さんがいつも静岡で降りないだけで、乗った新幹線も線路も方向も同じはずですよ」

「えっ」

「えっ」

 

蜃気楼でも見たんか。

 

そうして一時間半ほどで身延駅に到着すると、駅前にはすでにゆるきゃん△のパネルが。聖地っぽい。

 

犬子と先生もっと出して。

 

旭さんがほうとう食べたいと言っていたので、その足でまずはお昼ご飯です。

実際に食べて思いましたが、ほうとうの「家でも作れるだろうけどお店で食べちゃう感」って半端ないですよね。

でもきっと、自分で作ろうとは思わないし、しかし多分いつでも食べようと思えば食べられるのだろうけど、まあとりあえず山梨にきたらほうとうだよね、みたいな感じでやっぱり金払って食べる感。

この日常の中の特別感は、魔女の宅急便でいうニシンパイとベクトルとしては似てると思います。

もっと華やかなものはたくさんあるだろうけどおばあちゃん得意だから作っちゃうのよね~、まあ食べるけどさ~、という雰囲気です。

 

という訳で、ほうとうを食べた後は身延まんじゅうを購入。旭さんが一箱買ってくれました。

でもご飯食べたばかりで全然お腹空いてないし、とりあえず2人で、「あー、おまんじゅうだなあ」みたいな無感動に寄り添いつつ、1つずつ食べました。

 

DSC_0332.JPG

3日目まで、依然として残り続けることになる。

 

「じゃあ次は旧下部小・中学校跡に行きましょう」

 

旭さんはそう仰いましたが、え、マジ?

身延周辺は電車の便がめちゃくちゃ悪いので、正直私としては身延駅の周りプラプラしてあとは焼津に行けばいいかなと思っていたのですが、どうやら旭さんはきちんと聖地巡礼を極めようとしてたみたいです。

しかし当然、事前に時刻表をチェックしている訳もありません。

なぜなら私は後は引き返すだけだと思っていましたし、旭さんは「田舎の」公共交通機関というものに大変疎く、

「列車というものはすべからく山手線か御堂筋線くらいの間隔で来るべし」

みたいに考えていたからです。

私が嫌な予感を抱えながら、旭さんとともに時刻表を確認します。

 

「次の下りの発車は……ああ……1時間30分後ですね、旭さん」

「ほーん(ほーん)」

 

2人で苦笑いしながら見つめ合います。

すると旭さんが一言。

 

「どうせ4駅でしょ? じゃあ歩きますか

「なにを言い出すのか」

「他にすることも無いですし」

「あの、都会の4駅と田舎の4駅は違うんですよ」

「へーきへーき。線路に沿って歩くだけでしょ

「イヤーマフに脳を乗っ取られているのか?」

 

こういう経緯で、結局歩くことになりました。

誤解の無いようお断りしておきますと、旭さんとの旅行ではよくあることです。

旭さんは方向音痴のくせに歩くことが大好きで、ご自身のホームである大阪を案内する際も、張り切って先頭を歩いて下さるのですが、本来5分で着く場所に大体15分くらい掛かります。

しかしそこで、こちらがスマホを出してGPSを使おうとすると

「ひゃ~、自分チキンやなあ~、ぷぅ~」

と煽ってくるので、私たちの旅行においてはスマホの使用が禁じられています。

別に使ってもいいのですが、安心で快適な旅程と引き換えに、尊厳を奪われます。

私と旭さんは共に自尊心を守り抜く人柄なので、必定、スマホを見ることは許されないのです。(煽らなければ良いだけでは?)

 

そうして歩くこと40分。

人もいなければ獣もいない。

途中、歩道が無くなって車道を歩くはめになり、横を通り過ぎていく大型トラックの数々。

たまに出会う道路工事のおじさんが「何故こいつらは昼間にこんなところを歩いているのか」という目で見てきます。

そんな中でも、楽しみを見つけていくのが私たちの良いところです。

 

「あっ、旭さん、栗が落ちてますよ! 野生の栗!」

「ホンマや! イガイガや! イガイガ付きの栗!」

「めっちゃ痛い! 持てない! 防衛本能がすごい! 栗ガチ勢かこいつ!」

「はー、しょーもな。何が栗やねん」

「急に冷める」

 

そうこうしているうちに、無事に一つ目の駅、塩之沢駅に到着しました。

 

「あと1時間ありますね、旭さん」

「じゃあもう1駅歩きますか」

「そう言うと思ってたけど……時間大丈夫かな……」

「今まで1駅40分でしょ? あと1時間で1駅なら余裕じゃないですか」

 

旭さんにしては珍しく、直近の歩行実績を基にした分析により導かれた結論でした。

いつもはもっとフィーリングに頼った意見が出てくるので、今日は一味違うなと感心してしまいました。

ということで、歩きます。

 

そこからさらに数十分。

すでに一時間以上歩き続けている訳で、もはや私たち2人の間には会話もほぼ無くなっており、よく分からない義務感だけで歩き続けていました。

途中、今まで見えていた線路が見えなくなって少し右往左往したりして、しかし私たちは止まりません。

 

そして前の駅から40分ほど歩いた頃、私の頭の中で一抹の不安がよぎります。

おかしい……駅まであと何キロ、みたいな標識にすら出会わない……。

駅の気配がまるで見えない……。

 

無題2.jpg

歩道が無い、先の見えない道を行くことの不安よ

 

私は旭さんの後ろを歩きながら、こっそりとスマホを取り出しました。

GPSを起動して、グーグルマップをオン。

そして映る自分たちの現在地……。

 

「旭さん」

「はい(応答)」

「お知らせがあります」

「はい(予感)」

「前の駅から次の駅まで、まだ半分も行けてません」

「はい(理解)」

「私たちはもう、前に行くにしても、引き返すにしても、乗車予定の電車には間に合いません」

「何でスマホなんか見たんだ!(義憤)」

 

それでも、私たちは歩くしかないのです。

間に合わないと分かっていても、前に進むしかありません。

だってこの道路、バスもタクシーも通らないから。

 

そうして20分ほど歩くと、私たちの後ろから、聞き慣れない音を響かせて、それはやってきました。

 

「旭さん、電車ですよ。私たちが乗るはずだった、電車です」

「はい(受容)」

 

それはゆっくりと、私たちの横を通り過ぎていきます。

私たちはただ見送ります。見送ることしかできないのです。

 

そうしてさらに20分ほど歩いて、ようやく次の駅、波高島(はだかじま)に到達しました。

旭プランでは4駅進む予定でしたが、実際に時間内に進めたのは2駅未満でした。

 

「何が波高島だよ、ふざけた名前しやがって……」

 

旭さんが駅の名前にヘイトを集め始めます。

 

「漢字がさあ……ふざけてんだよ……お前そんなんで裸島(はだかじま)名乗れると思うな……!」

 

こんなに怒るとは思いませんでしたが、それもこれも、波高島にイオンがなかったのがいけないと思います。

もしも波高島にイオンモールがあったなら、旭さんはきっと怒りに打ち震えることもなかったでしょう。

イオンがあれば、ただ、それだけでよかったんです。

私はイオンを波高島に誘致できなかった自分に、腹立たしさを覚えることしかできませんでした。(友達想い)

 

さて、すでに下りの電車は行ってしまっていましたが、幸い、引き返す上り電車はすぐに来るようでした。

無人駅の波高島のベンチで、私たちは身延まんじゅうを食べます。

 

「おいしい……身延まんじゅうおいしい……カロリーを感じる」

 

昼に食べた時とは雲泥の差です。

こんなにおいしいものがあったのか。

たくさんあるくと、おいしいね!(ブチギレ)

 

その後、無事に上り電車に乗ることはできたのですが、私も旭さんも無人駅から電車に乗ることが初めてでした。

どうやら無人駅から電車に乗る際は、乗車する際に整理券を取らなければならないらしかったのですが、そのことに、次の駅のアナウンスで初めて気付いたのです。

ただ、私も旭さんも、もうそんなことはどうでもよく、ただただ歩き疲れて失われた精神力を回復させるため、今回の件は私と旭さんどちらに責任があるかをはっきりさせて互いにマウントを取ろうとすることしか考えていませんでした。

激しい応酬の末、最終的には、

途中でスマホを見るくらいなら最初からスマホを見なかった私が悪い、というところに落ち着きました。(鉄の掟)

 

そうして、鈍行に揺られること2時間強。

この日の宿泊地である西焼津駅に辿り着きました。

ただ、私たちは券売機の無い無人駅から乗ったため、改札で通す切符を持っていませんでした。

なので、改札横の駅員さんにその旨伝えます。

 

「あの、切符無いので清算お願いしたいんですけど」

「はい、どちらから乗られました?」

「波高島駅から」

「波高島ァ!? なんでそんなとこから!?」

 

――色々あったのだ。

 

 

(②に続きます。)

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