まえがき
お世話になっております、くさかべです。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
私は秋口に、とある筋から不倫話を持ち掛けられ、丁重にお断りしたところ、何故かこちらが悪者になった挙句こじれにこじれて人生で初めて着拒機能を使うという、まるでライトノベルのような体験をして大変疲弊しておりました。(無差別級超攻撃型ヒロイン)
ここらへんは四年後くらいにほとぼりが冷めてからラノベのあとがきとかにおもしろく書ければいいなと思います。(ポジティブ個性)
さて、一年前くらいにラノベ業界の三年縛りについて、少しだけツイッター・note界隈にて言及されたことがありました。
https://note.mu/teren_mikami/n/n861c68fe8f75
https://note.mu/osaka_seventeen/n/na180f839662a
https://twitter.com/shigetayuu/status/1055841299503308800
https://twitter.com/ss_editor/status/1135812806127656961(これは最近)
これらの話を総括すると、
①景気の良い時代にあった(かもしれない)けれど、今は都市伝説と化している
という感じかなと私は解釈していますが、一部には
②似たような話が今でもあって他社で書いたらデビュー元を出禁になった
というようなお話もあったようです。
今日はこれについてのお話です。
何をお話しするかと言えば、私自身の具体的な話です。
結局のところ、昨年出てきた記事の中では、「個々人の状況によって千差万別である」というのが、(先ほどの総括とは別観点での)結論だったと私は認識しています。
であれば、一つのケースとして具体的な話があった方が、ほんの少しだけ指標になるのではないかなと思いました。
何の指標かと言えば、これからデビューする方々にとっての指標です。
私が2014年にデビューしてからすでに5年が経ってしまいましたが、5年前にお会いした方のうち、いつの間にか音信不通となってしまった方は数多いです。
別にそれは全く悪いことではなく、小説以外のことに価値を見出したということでしょうから、喜ぶべきことです。(もろちん、後述するように名前を変えて未だに執筆業に携わっていらっしゃる方も少なくないと思いますが)
ただ、三年縛りだとかデビュー元だとかいうものに囚われてしまい、いつの間にか疲弊してしまった方もいるのではないのかなというようにも思います。
ですので、私のケースを踏まえて、色々な考え方がありますよね、というようなことを提示することで、この記事が誰かのための一つの考える材料になればいいのかなと思っています。
もろもろの場面で名前が上がりにくくなります
私のデビューは電撃文庫ですが、別に受賞した訳ではなく、四次落選からのデビューですので、俗に言う「拾い上げ」という状態でした。
つまるところ、受賞賞金だとか受賞に係る特別なプロモーションだとかは無く、先行投資を受けた訳ではないということです。
もっとも、イラストレーターさんがご高名なお方でしたし、発売前月の電撃文庫マガジンに新刊紹介とは別枠で1ページのカラー広告を載せて頂いていましたので、拾い上げにしては手厚いプッシュを受けていた可能性はあります。(もろちん、ありがたいことです)
当時の状況としては1巻と2巻で何度か重版をして、シリーズ自体は4巻で完結、という形だったかと思います。
そこから一年間ほど、プロットが通ってから初稿・二稿・三稿・四稿と、何度か書き直してやっぱり良くないから全ボツ、という流れを二作やりました。(絶命奥義)
これはまあそういうもんです。誰が悪いとかいう話じゃないです。(強いて言えばわし)
そういった中で、自分のやりたいこととレーベルが欲しているものの違いみたいなものはあるんだろうな、みたいなことは考えました。
極論を言えば、圧倒的な執筆技量で読み手をねじ伏せる、みたいなことはできるのでしょうが、当時の私には無理でがんす。
本来的には圧倒的な執筆技量~を目指すべきとも言えるかもしれませんが、まあそこは考え方次第です。
「ライトノベル他社や児童文庫他社などの賞に投稿しますがよろしいですか?」
というようなことを、担当編集者さんにおうかがいしました。
そこで返ってきたのが章題の一文です。
つまるところ、当レーベル一筋でなくなれば、発売時のプッシュやその他もろもろのフェア等でくさかべさんの名前は上がりにくくなりますよ、という感じの話です。(もろちん、大前提として編集部は著者の投稿を止める立場にない、というご回答も頂いてます。)
どう受け止めるかは人それぞれですね。
これは脅しでいわば永年縛りみたいなもんじゃねーかコノヤロー、と思う人もいれば、
何やそんだけかいな、と思う人もいそうです。
私の経歴をご存知の方はお分かりでしょうが、私はもろちん後者でした。
プッシュの確率が下がるのは好ましくないけども、そもそも本が出な始まらんしな、みたいな心境だったと思います。
ここで少し補足です。
そもそもデビュー初年に編集者さんと話をした際に「三年縛りってあるんですか」という質問をしたこともありました。
答えは「分からん」ということで、そこでの私の理解は「出版社の人間が分からんなら誰も分からんな、よっしゃ、閉廷!」みたいな感じでした。(地獄車)
こういった経緯もあり、ご回答頂いた半年後くらいから他社賞への投稿を始めた、という流れです。
そうしてまた半年後には、児童文庫レーベルから幸いにして受賞連絡を頂いたりすることになるのですが、その間にもデビュー元では雑誌連載や文庫化のお仕事などが引き続いていたので、別に干された訳でもなんでもありませんでした。
またまた補足ですが、これは2016~2018年当時の私という限定された一個人と、同じく2016~2018年当時のいち出版社内のいち編集者との応答であって、このうちの一要素でも条件が変われば、経過も結果も無限に変化していたであろうことを申し添えます。
具体的に言えば、受賞者であろうが拾い上げであろうが、現在時点で有力シリーズを発行している作家に「よそで書いたらプッシュしない」という編集者は恐らくいないと思いますし(売り伸ばせる貴重なタマに投資しない訳がない)、逆に、十年ぶりに連絡を取ってきた作家から「よそに投稿します」と言われて「ダメです」という編集者もいないでしょう(もはや覚えてへんやろ)。
もう一つ申し上げるのであれば、相手も自分も人間だから感情がある、ということです。あとは折り合いの付け方と関係性の築き方で色々なものが左右されるのではないでしょうか。
縛りよりも大切なこと
三年縛りを破ると業界から干されるというのはもはや都市伝説――かもしれない、というのは昨年の総括ですが。
そもそも、いち出版社のいちレーベルに、出版業界全体から著者を干せるだけの力があるのでしょうか、というのは始めに出てくる疑問ではないかと思います。
「あいつはやべー」みたいな情報共有は多少あるとは思いますが、それが数多いる編集者ひとりひとりに徹底されるとは到底思えません。(楽観的推測)
どちらかと言えば、各出版社からベストセラーを出しているヒットメーカー作家に無礼をはたらいた結果として、「あいつに書かせるなら私はもうここでは書きません」とか怒らせちゃって干される、みたいなケースの方がまだ想像できます。
でもそんな機会あるか?
そう考えれば、他社・他レーベルにアプローチするということにはさほどデメリットが無いように思えます。
とは言っても、何度も投稿してやっとデビューが決まって、「ああ、この出版社神ぃ~~~!」となる気持ちも分かります。
一つ所に腰を据えて頑張るんだ、恩返しをするんだ、という志も個人的には好きです。(倫理的性癖)
そこで、私個人の見聞を基に言うと、三年縛りなどよりも気を付けた方がいいのでは、と思う要素があります。
あくまで一つの傾向としてですが、編集長等のトップが十年近く変わらない編集部というのは、色々なものが硬直化している可能性があります。(全てがそうだということではなく、一つの傾向と可能性の話です)
これは出版業に限った話ではなく、どこの業種・職種でもそうではないでしょうか。
決定権を持ったトップ層が長くとどまると、ワンマン化し、トップの意向から逸れた・外れた存在が極端に疎外されやすくなります。
そうしたトップ層と看板作家が強く結びつくと、まあ気に入らない新人潰しみたいなことが起こったりもするでしょう。(一つの傾向と可能性の略)
現実にそういった編集部など無いとは思いますが、万一そういったことになり、潰される対象が自分だった場合には目も当てられません。
一つ所に腰を据えようと思っていたそこに居場所が無いのですから、真面目な人ほど馬鹿正直にプロットや原稿を出し続け、潰され続けることになります。
これ私のことでも電撃文庫のことでもないですよ。念のため。(先述の私の場合は、求められる方向性と原稿のクオリティの問題です)
そう考えた時、(良いか悪いかは別として)ここ数年、編集長やその上のトップ層が数年単位で異動しているレーベルなんかは、そういった心配はしなくてよくなります。
自分の書きたいもの・毛色に合ったレーベルを選ぶことが重要ですが、同時に、部局や編集部内の人事情報にも目を向けた方がいいんじゃないかな、とは老婆心ながらに感じます。
また、ラノベに限って言えば、あとがきや奥付などに担当編集者の名前が書いてあることもありますから、その編集者さんの出版ペースだとか、続刊の作り方だとか、担当作家の二作目を出す頻度だとか、そういったものをよく見ておくのも、デビュー後の指標を持つ上での材料の一つになるでしょう。
誤解の無いように申し上げれば、編集者の優劣を見るということではなく、自分に合った考え方・自分のやりたいことが実現できるのはどこなのかなということを考えたいね、ということです。
とりあえずやった方が良いこと
私は公募出身なので、ネット小説出身の人や、口利きから他社の仕事を得た人のことは分かりません。
ですので、以下のことが全ての人に当てはまるかどうかは不明ですが、他社・他レーベルで仕事をする際にやっておいた方が良いことを述べておきます。
①とりあえずよそに出すで、ということをデビュー元に伝える。
⇒その方が無難だと思います。関係性にもよりますが、あと腐れが無いことは事実です。
②他社公募に出すなら経歴を全部出しておく。
⇒いついつどこでデビューしましたということを応募票に書こうね、という話です。
経歴を伏せた後にデビュー歴がバレて最終選考から外されたりすることがあります。(見聞)
事前に言っておいてくれれば別の形でどうとでもできたのに――みたいな編集部の嘆き、あると思います。(推測)
③デビュー元には話を通してるで、ということを他社担当に伝える。
⇒そもそもこちらから言う前に、相手から聞かれると思います。
私は念押しの上、聞かれました。
同業の人からしても、傍から見れば当時の電撃文庫はよほど修羅の国だったのだな、と目からウロコでした。
(今はもう、電撃にしてもメディアワークスにしても、たくさんの作家さんが他社で仕事をなさっていますので、この二年でまた状況は変わっているなと思います)
④名前を変えてデビューしている知人に会ってもそっとしておく
⇒私自身の体験ではないのですが、おおいにあり得るなと思ったので付け足します。
私も名前を変えたタチではありますが、別名義のことを公言しているので、そういう相手に対しては「おっす、おひさ~」みたいな感じで良いと思います。
逆に、そうではない、名前を変えたことを公言していない人に対しては、「あっ、初めまして」から入った方が無難だと思います。
みんな物差しは違うので、他者の考えを尊重しましょう。
あとがき
大体こんな感じです。
長い文章に目を通して頂きありがとうございました。
読んだ感想は適当にツイッターとかで呟いて下さい。
そう言えば、入選した永瀬清子現代詩賞の詩集ですが、11月中に送付されるみたいです。
来たらこのサイトなどでお知らせします。
あと、まごころの三巻、書いてもよいみたいなのでこれから書きます。
みなさんのおかげです。ありがとうございます。(これがいちばんうれしい)
年内中に初稿を終わらせたいですね。
甲羅のさんの原稿も進めています。
もう一年以上お待たせすることになっていて、我ながら畜生という感じです。
こちらも年内中に初稿を終わらせたいです。
最後になりますが、記事内で「もちろん」を全部「もろちん」に変えていたのですが、気付いた方はいらっしゃいましたでしょうか。
私、気になります!(えるたそ~~~)